column 医院コラム

新型コロナウイルス対策

2020.04.13

② ウイルス感染に対抗する歯科の重要性

日本歯科医学会より

「インフルエンザ予防と歯周病菌との関係」より考えられること

1.口腔健康管理(口腔清掃)はウイルス感染への水際対策です

感染症予防のために大事なことは、身体を清潔にすることです。清潔な体の表面に病原菌は感染しにくいのです。
しかし、手や体、髪を洗うことは心がけていても、お口の中を清潔にすることを忘れていませんか?
ウイルスの感染は、鼻と口と目から起こります 1)。
インフルエンザウイルスの場合、お口が不潔だと、口に入ってきたウイルスが感染しやすくなります。
お口を清潔にし、健康に保つことはウイルス感染の水際対策なのです。
お口に住んでいる細菌が出すタンパク分解酵素は、ウイルスが粘膜細胞の中に感染することを促進します 2)。
ウイルス感染予防のために、お口の衛生管理を心がけて下さい。特に歯周病菌は強力なタンパク分解酵素をもっています。
歯周病にかかっている方には、ご自身での口腔清掃と共に、歯科医院におけるプロフェッショナルケアも大事です。

 

2.不潔なお口は腸内細菌のバランスを乱して全身の免疫力を弱めます

ウイルス感染への有効な対策は、体の免疫力を低下させないことです。
腸内細菌のバランスは全身の免疫に密接にかかわっています。
そのため、腸内細菌のバランスが崩れると、感染症にかかりやすくなったり、さまざまな全身疾患が発症しやすくなることが知られています 3)。
お口の細菌が食道・胃を通って腸内にたどり着き、腸内細菌のバランスを乱して全身疾患発症の原因となることが判ってきました 4)。
お口が不潔な方、特に歯周病にかかっている方は、食事のたびにたくさんのお口の細菌が腸に運ばれるため、全身の免疫力が低下するリスクが高まります。

 

3.お口が不潔だと肺炎のリスクも高まります

中高年になると誤嚥と言って、食べ物や唾液が気道に入ってしまうことがあります。
お口が不潔だと、この時にたくさんの細菌が気管に入って肺にまで至り、誤嚥性肺炎という肺炎を起こしてしまいます。
誤嚥のリスクが高い方は、ウイルス性肺炎のリスクも当然高くなります。
さらに、歯ぐきに住む歯周病菌が血流にのって全身を駆け巡り、体のあちこちに炎症を起こします 5)。
また、歯ぐきの炎症により作られた炎症を起こす物質(炎症性物質)も血流にのって全身へとばらまかれます。
その結果、体の免疫が乱されてウイルス感染による炎症症状が進みやすくなってしまいます。

 

4.注意してください!コロナウイルスは口からもやってきます

現在、中国からたくさんの論文が発表されています。これらの論文は、ウイルス感染が「口腔からも始まる」可能性を示しています 1,6)。
今後ますます検証が進むと、コロナウイルス感染の予防には口腔衛生管理が重要であることがはっきりしてくることでしょう。
手洗い・うがいに加えて、お口のセルフケア(丁寧な歯磨き)とプロフェッショナルケア(歯科医院での専門的クリーニング)を心がけてください。
また、舌を磨くこともウイルス感染予防に効果があります。

 

文献

  • *1) Peng X, Xu X, Li Y, Cheng L, Zhou X, Ren B.:Transmission routes of 2019-nCoV and controls in dental practice. Int J Oral Sci.12(1):9, 2020.
  • *2) 松山州徳:プロテアーゼ依存的なコロナウイルス細胞侵入.ウイルス.61巻1号,pp.109-116,2011.
  • *3) 安藤朗編:腸内細菌と臨床医学.別冊・医学のあゆみ.医歯薬出版, 2018.
  • *4) Olsen I, Yamazaki K.:Can oral bacteria affect the microbiome of the gut? J Oral Microbiol. 11(1):18, 2019
  • *5) Beck JD, Slade G, Offenbacher S.: Oral disease, cardiovascular disease and systemic inflammation.Periodontol 2000.23:110-20, 2000.
  • *6) Yan Y et al.: Consensus of Chinese experts on protection of skin and mucous membrane barrier for healthcare workers fighting against coronavirus disease 2019. Dermatol Ther.13:e13310, 2020.